マンションの備え
東京都では約900万人がマンションなどの共同住宅に住んでいます(東京都)。建物が無事でも、停電でマンションの水やエレベーターが止まり、家で暮らし続けるのが難しくなったことが、阪神・淡路大震災や東日本大震災で起きた、と東京都は書いています(出典)。東京都は各住戸で1週間分の備蓄を勧め(出典)、大阪府・京都市は排水管の状態が分かるまでトイレを流さないよう書いています(大阪府・京都市)。エレベーター・水・トイレ・備蓄・住民どうしの順に並べます。
- 各住戸で備える量(1人・1週間)
- 水21L
- 1人1日3L×7日(首相官邸・農林水産省)。携帯トイレは35回分(1人1日5回・内閣府)。2人なら水42L(2L×21本)・携帯トイレ70回分。家族の人数で出すなら備えプラン
高い建物は長く大きく揺れ、高い階ほど家具が動きやすい
- 長周期地震動で、高層ビルは大きく長い時間揺れ続けることがあり、数百km離れた所の地震でも大きく揺れることがあります。家具が倒れる・落ちるだけでなく、大きく動く危険もあります(気象庁)。気象庁の長周期地震動階級3では、固定していない家具が動くことがあり、階級4では固定していない家具の大半が動き、倒れるものもあります(出典)。
- 東京都の被害想定は、建物の構造に大きな被害がなくても、特に中高層階では背の高い家具が倒れる可能性が高く、滑りやすい家具やキャスター付きの機器が大きく動いて人にぶつかる可能性がある、としています(出典)。
- 大きく揺れたあと慌てて外に飛び出すと、上の階から落ちてくる窓ガラスなどでけがをする危険がある、と京都市は書いています(出典)。
エレベーター
- 止まる仕組み。地震時管制運転の装置があるエレベーターは、一定の揺れを感じると近くの階に止まって扉を開けます。震度4以上程度の強い揺れで止まったときは、壊れていなくても技術者の点検を受けるまで動きません(日本エレベーター協会)。点検が終わるまでは非常階段を使います(東京都)。大きな揺れの直後は、動いていても使わないよう京都市は書いています(出典)。
- 乗っていたら。すべての行先階のボタンを押し、最初に止まった階で降ります。無理に出ようとすると大変危険で、インターホンで状況を伝えて救助を待ちます。エレベーターは気密ではなく、窒息の心配はありません(日本エレベーター協会)。ただし温度と湿度が上がる可能性がある、と新宿区は書いています。ドアを無理にこじ開けたり、天井の点検口から出ようとしたりしないことも挙げています(出典)。
- 救出まで時間がかかる。東京都の被害想定は、都内で閉じ込めにつながりうるエレベーターを22,426台とし(都心南部直下地震・冬の夕方。出典)、首都直下の地震では初めの小さな揺れから本震までが短く、管制運転の装置があっても安全に止まれず閉じ込めが多く起き、救出に半日以上かかる場合がある、としています。停電で空調が止まると、夏は熱中症などのおそれもあります(出典)。平成17年7月の千葉県北西部の地震では、保守の大手5社の分だけで約64,000台が止まり、閉じ込めは78件、通報から救出まで平均で約50分弱、最大170分でした(国土交通省)。
- 東京消防庁は、エレベーターの中に水や携帯トイレを入れた防災キャビネットを置くことを、マンションの対策に挙げています(出典)。
東京消防庁の動画「地震!その時マンションは【2分】」(YouTube の「東京消防庁公式チャンネル」・2:00)は、地震でエレベーターが止まる、ドアが開かなくなるなど、マンションで起きることと備えを示す動画です。
停電すると、上の階に水が届かない
- ポンプで水を押し上げている、または受水槽を通しているマンションでは、建物が停電すると水が出なくなることがあります(横浜市水道局)。令和元年の房総半島台風でも、千葉県の一部の集合住宅でポンプが止まって断水が広がりました(千葉県)。
- 非常用の水栓。電気を使わない非常用の給水栓が地上の近くに付いていることがあります(建物によっては、設置の時期などで付いていないこともある)。平成30年の台風第21号のあとには、停電が終わってもポンプを動かし直していないなどで水が使えなかったという声が多かった、と西宮市は書いています(出典)。札幌市は、使うときは管理組合などの決まりに従うよう書いています(出典)。水栓の場所は、管理会社や管理組合に今のうちに聞いておきます。
- ポンプが止まっているあいだの飲み水は備蓄でまかないます。量と置き方は水の備え方に。停電中に使うスマホ・照明・Wi-Fi の電気は、停電シミュレータでポータブル電源の容量を出せます。
- 受水槽の水。受水槽には、地震を感じて自動で給水を止めるものと、手で切り替えないと出し続けるものがあるので、仕様を確かめておくよう目黒区の手引きにあります(出典)。
トイレは、排水管を確かめてから流す
- 排水管が壊れたまま流すと、下の階で汚水が漏れる可能性があるので、排水管の状態が分かるまで流さない、と大阪府・京都市は書いています(大阪府・京都市)。東京都の被害想定は、マンションの中の排水管の修理が終わっていなければ、水道が戻ってもトイレは使えないとしています(出典)。
- 横浜市は、集合住宅では管理組合などが決めた災害時のトイレのルールを確かめ、下の階の住戸から順に水を流して確かめるよう書いています(出典)。
- 流せないあいだは携帯トイレを使います。1人1日5回、1週間で35回分が目安です(内閣府。人数ごとの回数は携帯トイレで)。目黒区の手引きは、携帯トイレは各戸で、簡易トイレは管理組合で備蓄する例を挙げています(出典)。
家にとどまるための備蓄
- マンションは停電でポンプが止まると断水し、エレベーターも止まるので、各住戸で1週間分の備蓄を、と東京都は勧めています(出典)。
- 高い階では、災害のときエレベーターが使えず、階段で何リットルもの飲み水や重い生活用品を運ぶのは非常に困難なので、ふだんから計画的に備蓄するよう京都市は書いています(出典)。
- 東京都の被害想定は、湾岸のタワーマンション街の様相として、中高層階の住民はエレベーターが止まると地上に降りるのが難しくなり、避難所で物資を受け取れず家にとどまらざるを得ない人も出ること、エレベーターが戻らないまま家の備蓄がなくなると家にいられなくなることを挙げています(出典)。
- 水・食料・携帯トイレの量は備えプランで、家族の人数から出せます。家にとどまってよい条件は在宅避難に。
住民どうし・管理組合で備える
- 安否を知らせる。目黒区の手引きは、各階の決めた場所に集まる、玄関のドアに決めておいた安否確認のシールを貼る、などの方法を決めて繰り返し訓練する例を挙げています(出典)。横浜市栄区は、無事なら玄関ドアの外側などに「無事です」のマグネットを貼り、一軒ずつ声をかけなくても安否が分かるようにしていました(出典)。
- 声が届かない。防音性の高いマンションでは、ドアがゆがんだり家具が倒れたりして閉じ込められても、助けを呼ぶ声が聞こえない、と東京消防庁は書いています。倒れてもドアをふさがない家具の置き方と、住民どうしの安否確認の仕組みを挙げています(出典)。支えの要る人がいる住戸には、ノックや声かけで無事を確かめるよう東京都は書いています(出典)。
- 管理組合の仕事。国土交通省のマンション標準管理規約は、管理組合の業務に防災を挙げ、コメントで、防災マニュアルの作成、防災訓練、防災用名簿、防災物資の備蓄などを例に挙げています。居住者名簿を作るときには、災害のとき自分で避難するのが難しい人を(本人の同意を得て)前もって把握しておくことが望ましい、ともしています(出典)。
- 東京都は、停電のときも水とエレベーターに要る最小限の電源を持ち、防災マニュアルと住民の防災活動のあるマンションを「東京とどまるマンション」として広めています(出典)。